シムプレートは、製造ラインや設備の精度を高めるための重要な役割を担う部材です。薄板ながら高い厚み精度で寸法管理が可能なため、機械要素や金型、治具などをわずかに微調整する際にも幅広く利用されています。
今回は、シムプレートの基本的な知識から材質・加工方法・選定基準、そして具体的な使用シーンやBtoB向けの調達方法までを網羅的にご紹介いたします。
シムプレートとは
シムプレートは、部品同士の間隔や高さをわずかに調整するために使用される薄板の総称です。ワッシャーやスペーサーよりもさらに薄いものを扱えるため、製造ラインや設備機器の公差調整において非常に重宝されています。

最大の特徴は「微細な厚み」や「高精度な公差管理」に対応しやすいことです。機械装置が組み付けられる段階で、わずかな厚み誤差を最適化することで、後工程の不具合や振動、異音の発生を防ぐことができます。また、金型や治具などでも寸法調整に用いられるケースが多く、製造現場の品質向上に大きく貢献している部材といえます。
シムプレートの用途
金型や組立治具への活用
シムプレートのもっとも代表的な活用例は、金型や組立治具などの高さや位置を微調整する際です。金型の場合、寸法誤差が生産品の品質に直接影響するため、シムプレートを挟んで必要な公差を確保することで、不良発生率の低減や安定生産を実現することができます。
機械設備の据え付け調整
モーターや回転軸を含む機械設備を設置する際、基盤とのわずかな誤差が振動や騒音を生む原因となります。こうした場合にシムプレートを用いて平行度や高さを最適化しておくと、稼働中のブレを最小限に抑えられ、且つ、装置の長寿命化や作業者の安全性にもつながります。
シムプレートの材質・加工方法と選定基準

材質別の特徴
ステンレス(SUS304, SUS316, など)
ステンレスのシムプレートは耐食性や機械的強度の面でバランスが良いため、汎用性が高く、さまざまな製造現場で採用されております。とりわけ食品・医療関連の設備では、耐食性に優れたSUS316を採用することが多い一方、コスト面を重視する場合にはSUS304がよく使われます。
鉄(SPCCなど)
鉄材はステンレスよりも安価で、必要な強度や加工性を確保しながらコストを抑えられることが特徴です。ただし、サビ対策が必要になる場合があるため、屋外や湿度の高い現場での使用には注意が必要です。
真鍮・銅合金
真鍮や銅合金のシムプレートは、電気・熱伝導性が求められる箇所に適しています。基板や電気接点周りの通電不良対策、放熱が必要な環境などで利用することで、作業効率や装置寿命を高めることができます。
焼き入れリボン鋼(SK材)
高い硬度や弾性が必要なシーンでは、焼き入れリボン鋼を用いることで耐久性を確保できます。振動が激しい現場や、大きな荷重がかかる箇所に向いており、強度重視の設計には有効な選択肢です。
樹脂シム
樹脂製のシムプレートは軽量で非磁性、絶縁性があるため、電子機器や軽量化が求められる装置などで注目されています。金属とは異なる特性を持つため、熱伝導や磁性の有無を考慮したい環境では有用です。
シムプレートの加工方法
エッチング加工
エッチング加工は、化学薬品で金属表面を溶解除去しながら加工する方法です。非常に薄い板や箔、細かな穴が多数必要とされるような部品の加工に向いており、薬品処理のためバリが発生しにくいという利点があります。高精度加工を必要とする分野でも注目度が高い技術です。
プレス加工
プレス加工は、大ロット生産時にコストを抑えられる代表的な手法です。あらかじめ金型を作成する必要があるため初期投資がかかりますが、同じ形状を大量に製造する場面では費用対効果が高まります。
レーザー加工
レーザー加工は、複雑な形状や小ロット生産に適しています。特に設計変更が多い試作段階や多品種少量生産では、金型の作成費用をかけずに柔軟に形状を調整できる点が大きなメリットとなります。
エッチング加工については以下の記事もご参照ください。
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選定時のポイント
使用環境と強度要件
まずは、使用される環境がどのような温度や湿度、薬品にさらされるかを把握することが肝要です。たとえば、海辺や屋外で使う場合は、ステンレスや樹脂シムのような耐腐食材質が望ましい場合があります。
振動が激しい現場では強度のある材質を、絶縁性が必要な場合は樹脂系など、条件に合わせて最適な材質を選んでいただくことが大切です。
コスト・ロット・リードタイムのバランス
材質や加工方法に加えて、どのくらいの数量やどれだけのスピードで入手が必要かによって選定プロセスが変わります。
大量生産が見込まれる場合は金型を作成してプレス加工を選んだほうがトータルコストは抑えられることが多いですが、少量多品種で頻繁に形状変更があるなら、初期費用が安価に済むエッチング加工、金型の初期費用をかけないレーザーカットなどの方法を選ぶことで費用対効果が高くなる可能性があります。
シムプレートの使用シーン・取り付け方

隙間調整や高さ合わせ
シムプレートは、部品同士のわずかなズレを調整するために挟み込む使い方が最も一般的です。(シムプレートとは の部分の説明と重複している)取り付け方のバリエーション
部品間に単純に挟む方法のほか、ネジ止めをするためにシムプレートに穴を空けて固定する方法や、両面テープや接着剤で軽く仮留めして振動やズレを防止する方法などがあります。
薄いシムプレートほど扱いが難しく、取り付ける際に曲げや歪みが発生しやすいため、作業時には丁寧に取り扱っていただく必要があります。メンテナンスや定期交換のことを考慮し、簡単に取り外しができるよう配慮することも重要です。
シムプレートの調達方法
ホームセンター・ECサイト(規格品の少量調達)
必要な枚数がごく少量で、かつ至急手配したい場合には、ホームセンターやECサイト具体的な社名は消した方が良いかと思います。で規格品を購入するのが手軽な選択肢です。多種多様な材質・厚みを扱っているため、試作品や応急的な対応など、限られた数量で利用する際に便利です。
大手メーカー・商社を通じた規格品の大量調達
生産ラインで継続的に使用される規格品を安定供給する必要がある場合は、大手メーカーや商社と連携し、まとめて発注することを検討いただくとよいでしょう。
金属加工メーカーへの特注オーダー
規格品では対応できない形状や特殊な材質、極薄板などが必要なケースでは、金属加工メーカーへ特注オーダーする方法が最適です。プレス用金型を作って大ロットに対応することもあれば、レーザー加工やエッチング加工などを駆使して柔軟に対応してもらうことも可能です。
試作開発から量産まで一貫してサポートしてくれる企業もあるため、特殊要件のある場合は早めに相談することで、スムーズにプロジェクトを進められる可能性が高まります。
弊社でもエッチング加工による特注オーダーの対応を行なっており、半導体製造装置に使⽤されるシムプレート(素材:SUS304 板厚0.01mm)の特注製造を行った経験が多数ございます。

以前はレーザー加⼯で製造していましたが、薄板加⼯には不向きで、希望する板厚や形状を製作することができませんでした。そこで、弊社がエッチング加工により、最薄0.004mmのカスタムシムを製作しました。
シムプレートの製造ならUPTにお任せください
UPTでは、得意とするフォトエッチング技術とさまざまな表⾯処理との組み合わせにより、板厚精度が⾼く、極めて⾼精度な、シムプレートの特注対応を⾏っております。他社では加工が難しいと断られた案件でもお気軽にご相談ください。